【P.-Miauor-Q 85/3.2】テクノロジー #1 光学系

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目次

レンズ構成


「最初のダブルガウス」として知られる、4枚からなるレンズ構成となっています。
「ガウス構成」とは、凸メニスカスと凹メニスカスを離して配置したダブレット(2枚構成)のことで、これを2組用いる構成のため「ダブルガウス」と名が付いています。
これは天文学者アルヴァン・クラーク(Alvan G. Clark)により1888年に特許出願(US Patent 399,499)されたもので、ガウス構成のレンズを2組、前後で完全対称となるように配置したものです。
現在では収差を抑えて大口径化され、「変形ダブルガウス」として数多くのレンズに採用されています。
標準域の大口径単焦点レンズの多くは「ダブルガウス」が元になっていると言っても過言ではありません。


話を本レンズに戻しますと、初めからこの構成を目指したわけではなく、正確には「この形に落ち着いた」とでも言うべきでしょう。
誤解なきように付け加えるならば、本来レンズに生じる収差をなるべく抑えるために4枚の対称構成を取るのがダブルガウス構成です。
一方、本レンズでは収差の抑制は不完全なものとなっており、その結果として強烈なソフト効果が生まれています。

収差と特徴

当初「初めてのレンズ設計ならトリプレットだろう」と考え、

  • 35mmフルサイズのイメージサークル
  • 中望遠(焦点距離70mm~150mm)くらい
  • F2.8~F4くらい

を目指して設計していました。これらについて、ひとつずつ見ていきます。

イメージサークルについては、メインで使用している「PENTAX K-1」のファインダーで像を確認したかったため、という理由からです。
収差については特に考えず、極端な周辺光量落ちが無ければ構わないだろうと考えました。
焦点距離については、まず広角は設計やレンズの選定など色々と難しくなりそうなのでパスし、イメージサークルが確保しやすく収差も穏やかになりそうな望遠系にしようと考えました。
中望遠としたのは、仮に収差が大きくソフトになったとしても利用しやすく、また鏡筒設計まで考えたときに3Dプリンタでの出力サイズをあまり大きくしたくなかったためです。
F値については、世間一般でのいわゆる「大口径」を目指すと口径自体も大きくなってしまうため、「大口径」から一歩引いたあたりにすることにしました。
とはいえ、いずれも決定ではなく、なるべく柔軟に(下方)修正できるような目標値としました。

さて、問題はやはり「コスト」です。
予算が潤沢にあるならばともかく、あいにく個人製作、試作をするにもあまりお金は掛けられません。
もちろん机上でシミュレートするだけならいかようにもできるのですが、あくまで目的は「レンズの組み立てキットとして世に出す」ことと決めていました。
そこで、安価に入手可能な既製品の単レンズに絞ってエレメントを選定したところ、トリプレット構成(凸凹凸)ではなかなかちょうど良いものを探すのに難儀していました。
そこでレンズの入手性や鏡筒の光学系保持部の設計のしやすさを考慮して前後を完全対称とすることにし、凸凹凹凸のダブルガウス構成となったという経緯を辿っています。
絞りについては「最初のダブルガウス」では差し込み式のいわゆる「ウォーターハウス絞り」だったようです。
以前110-Qアダプター(リンク先:DMM.makeページ)を製作した際に顕微鏡用のアイリス(虹彩絞り)が入手可能なことが分かっていましたので、こちらを中央の対称面に置くことにしました。

対称構成のメリットとして、絞りの前で生じた一部の収差を絞りの後ろでキャンセルできることが挙げられます。
ただし、やはりレンズの選定には苦労し、すべての収差を抑えることについては妥協しています。

光学系から見た特徴としては、

  • 完全対称型のために歪曲収差、倍率色収差、コマ収差について優秀
  • 球面収差が全域に残存
  • 像面湾曲、非点収差の対処が足りず、周辺の解像性能が良くない
  • エレメントの口径に余裕があるため、周辺光量が確保されている

といったことが挙げられます。
球面収差の残存は全体の「ソフト」な描写に、そして非点収差は周辺部のいわゆる「ぐるぐるボケ」として写真に表れます。
周辺部の性能はあまりよろしくないため、撮影の際には被写体をなるべく中心に置くことが求められます。
絞ることである程度これらの収差は改善しますが、市販のレンズのような「カリカリ」の描写には及びません。
レンズ構成こそ4枚と少なめですが、侮るなかれ。
透過光量の低下は「面」で効いてきますので、合計8面。もしコーティングがなければ透過光量は1/3も減少してしまいます。
レンズエレメントはいずれもマルチコート品を選定したため、透過光量や逆光耐性もそれなりのものとなりました。


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