はじめに
これまで3DプリントでPENTAX Qシリーズの「拡張グリップ」を作ってきましたが、検討しては候補から外すことを繰り返していたものがありました。
それは「バッテリー内蔵グリップ」の製作。
コンパクトなデジタルカメラにとって、「バッテリーの持ちの悪さ」は「ホールド性の悪さ」と同じく避けることができません。
「バッテリー内蔵グリップ」さえ実現できれば、(ボディのコンパクトさこそ犠牲になるものの)この2つの短所を解決することが可能です。
幾度となく構想を繰り返し、いくつかの試作を経て、ようやく納得できる形に落とし込むことができました。
「ARCTOS –Additional Refuelable Custom with Tough Optional Storage-」
バクロニムが意味するように、
・外部大型バッテリー
・USBによる充電・給電
を特徴とするバッテリーグリップです。
バッテリー残量を気にせず、のんびりと撮る方にオススメです。
ちなみに Arctos (アルクトス) とは、ラテン語で「クマ」を意味します。
3Dプリント製グリップの有償公開、同ダミーバッテリーのデータ公開、および必要な部品をまとめたキット品の頒布を行います。
電装については基本的には市販のモジュールを組み合わせるだけで、理論的にも実際の動作においても問題ないことを確認しています。
しかしながらモジュールに初期不良等がある可能性も否定できず、またリチウムイオンバッテリーは誤った使い方をすると非常に危険です。
ハンダ付け等、組み立てを誤るとカメラ本体の故障にも繋がりますし、必ず動作することを保証することはできません。
組み立てや運用でトラブルが生じた時に落ち着いて対処が可能なよう、電気的な知識を持った方を対象とします。
注意事項
本バッテリーグリップの使用には電子回路や電子工作の一般的な知識が必要です。使用前に充電モジュールやバッテリーのデータシートをご参照ください。
充電モジュールやバッテリーに変形・発火・発煙・異臭等の異常が発生した際は、すみやかに使用を中止してください。
カメラに取り付けての通常使用を前提としています。自己責任での使用の元、長時間の連続使用等の過度な負荷が掛からないようお気を付けください。
本解説および説明書記載事項に記載の内容は絶対の保証をするものではありません。
製作者は本バッテリーグリップを使用する上で生じたいかなる損害も責任を負わないものとします。
バリエーション
ARCTOSには、取り付けるカメラおよび機能の違いでバリエーションがあります。
・Q10/Q7用外部バッテリーグリップ「ARCTOS」
PENTAX Q10/Q7に対応するバッテリーグリップです。
・Q-S1用外部バッテリーグリップ「ARCTOS-S」
PENTAX Q-S1に対応するバッテリーグリップです。
・Q用外部バッテリーグリップ「ARCTOS-0」
PENTAX Qに対応するバッテリーグリップです。
必要な部品について
ARCTOSでは、以下の部品を必要とします。
【外装部品】
・3Dプリント製グリップ (ARCTOS: [MRO-BGP-Q10-01] / ARCTOS-S: [MRO-BGP-QS1-01] / ARCTOS-0: [MRO-BGP-Q-01])
・3Dプリント製ダミーバッテリー [MRO-DB-68-01]
【電装部品】
・18650バッテリー (3.7V、少なくとも1000mAh以上の放電容量のもの、充電モジュールデフォルトでの使用であれば1A以上の充電電流に対応するもの)
・18650バッテリーホルダー
・USB充電モジュール (TP4056使用、過充電・過放電保護回路を搭載のもの)
・2色LED (アノードコモン、ARCTOSのみ充電モジュールのLEDとして、無くても可)
・導線 (24AWG程度)
・ニッケルストリップ (ニッケルメッキ板等での代用も可、ダミーバッテリー電極として)
・熱収縮チューブ
【ねじ類】
・M2なべねじ (長さ4mm) (ARCTOS: x7 / ARCTOS-S: x8 / ARCTOS-0: x8)
・M2ナット x7 (ARCTOS: x7 / ARCTOS-S: x8 / ARCTOS-0: x8)
【工具類】
・プラスドライバー
・はんだごて
・はんだ (ニッケルストリップやこてのW数によっては必要に応じてフラックスを用意)
・ワイヤーストリッパー (カッター等でも可)
・ニッパー
・ラジオペンチ
・テスター
・ホットボンド (はんだ付け箇所の補助用)
・ヒートガン (熱収縮チューブ用、ライター等でも可)
頒布について
3Dプリント製グリップと同ダミーバッテリーについて、DMM.makeでのご注文はこちらから。
・Q10/Q7用3Dプリント製グリップ [MRO-BGP-Q10-01]
DMM.make: https://make.dmm.com/item/1279654/
・Q-S1用3Dプリント製グリップ [MRO-BGP-QS1-01]
DMM.make: https://make.dmm.com/item/1298869/
・Q用3Dプリント製グリップ [MRO-BGP-Q-01]
DMM.make: https://make.dmm.com/item/1436101/
・3Dプリント製ダミーバッテリー [MRO-DB-68-01]
DMM.make: https://make.dmm.com/item/1279203/
18650バッテリー以外の部品を詰め合わせた組み立てキットとして以下のリンクより頒布しています。
こちらは注文を受けてから上記2点の3Dプリント品を発注し、到着してグリップ部品を塗装した後に仕上がりを確認してから、電子部品を同梱して発送します。
・【受注生産品】Q10/Q7用外部バッテリーグリップ「ARCTOS」(3Dプリント部品+電子部品キット)
BOOTH: https://mr-optics.booth.pm/items/2757712
・【受注生産品】Q-S1用外部バッテリーグリップ「ARCTOS-S」(3Dプリント部品+電子部品キット)
BOOTH: https://mr-optics.booth.pm/items/2879334
・【受注生産品】Q用外部バッテリーグリップ「ARCTOS-0」(3Dプリント部品+電子部品キット)
BOOTH: https://mr-optics.booth.pm/items/3978798
また、3Dプリント品はDMM.makeから直接注文したい方は電子部品のみのパッケージもございます。
・【在庫品】外部バッテリーグリップ「ARCTOS」「ARCTOS-S」用電子部品キット
BOOTH: https://mr-optics.booth.pm/items/2758867
18650バッテリーについては、ご自身での準備をお願いします。各種ネット通販等で入手可能です。
バッテリーには細心の注意を払い、取り扱い・運用は自己責任にてお願いします。
FAQ
Q: どれを購入すればいいですか?
A: 迷ったらBOOTHの全部入りキットをオススメします。
グリップは自分で塗装したいという方はグリップとダミーバッテリーをDMM.makeで、電子部品キットをBOOTHでお求めください。
電子部品を自分で注文したいという方はグリップとダミーバッテリーをDMM.makeで、電子部品をご自身でお求めください。
いずれも組み立てが必要で、別途バッテリーを用意する必要があります。
PENTAX Q10/Q7には「ARCTOS」が、PENTAX Q-S1には「ARCTOS-S」が、そしてPENTAX Qには「ARCTOS-0」が対応します。
Q: 今後、組み立てキットとしてではなく完成品として頒布する予定はありますか?
A: バッテリーを内蔵した状態のバッテリーグリップやリチウムイオンバッテリーは、DC電源のものであっても電気用品安全法における「リチウムイオン蓄電池」に該当します。
バッテリーを同梱すると個人の場合もPSE認証が必須となりますが、個人では困難です。
このためバッテリーを除いた状態での組み立てキットとしての頒布としています。
また、リチウムイオンバッテリーを除く「完成品」としての提供については、今のところ予定しておりません。
Q: バッテリーはどこで買えますか?
A: 電子部品を取り扱っている店舗やネット通販で購入できます。
保護回路の有無やバッテリーセルの製造元の違いでピンキリですので、この辺りの選択眼は各自鍛えておくことをオススメします^^;
Q: 本体のバッテリーは同時に使えますか?
A: 本体のバッテリーの替わりに、より大容量のバッテリーを取り付けるバッテリーグリップです。
バッテリーが2つになるわけではありません。
Q: シャッターボタン・縦位置シャッターボタンは搭載していますか?
A: こちらのグリップはシャッターボタンは非搭載です。
現在シャッターボタンを搭載したグリップについては検討段階です。
Q: ボディを取り付けると隙間があるように見えますが…
A: 仕様です。造型誤差の影響で小さくなってボディに取り付けできなくなることを防ぐため、わずかに大きく設計しています。
隙間に薄めのフェルト等を貼り付けることで、フィット感も快適になると思います。
このあたりは好みによるところも大きいと思うので、各自調整をお願いします。
Q: レンズの対応を教えてください。
A: Qマウントの純正レンズについては、現在(2021年1月現在)発売中のすべてのレンズで干渉等はありません。
Qマウントレンズを取り付けた時の「収まりの良さ」を目的としているため、マウントアダプター類(純正Kマウントレンズ用アダプターQ含む)の取り付けは確認・サポートしておりません。
Q: 充電・給電に使用可能なモバイルバッテリーについて教えてください。
A: 当ページの「仕様」の下に充電を確認したモバイルバッテリーの一覧を掲載しています。
基本的に1A以上の充電に対応したもの、特に2.4A充電を謳うものであれば使用可能と思いますが、稀に使用できないものもあるようです。
(USB PD専用のアダプター等、ネゴシエーションしないと使用できないものがあります。)
給電では最低500mA以上の出力を確保する必要がありますので、PCのUSB電流や高速充電に非対応なUSB充電器では電流が不足します。
説明書
組み立てについては説明書をご参照ください。
以下のリンクよりダウンロードできます。
「ARCTOS 組立・使用説明書」v1.00 [PDF]
「ARCTOS-S 組立・使用説明書」v1.00 [PDF]
「ARCTOS-0 組立・使用説明書」v1.10 [PDF]
配線図
電装部品の配線図は以下のようになります。
仕様
ARCTOS | ARCTOS-S | ARCTOS-0 | |
---|---|---|---|
使用バッテリー | 18650サイズ (3.7V / 1000mAh以上) 1個 | ||
寸法 | 約112 x 76 x 45 mm (幅 x 高さ x 奥行き) | 約112 x 85 x 55 mm (幅 x 高さ x 奥行き) | 約100 x 77 x 39 mm (幅 x 高さ x 奥行き) |
質量 | 約160 g (バッテリー含む) | 約140 g (バッテリー含む) | 約105 g (バッテリー含む) |
外部インターフェイス | Micro USB Type-B (充電専用) | Micro USB Type-B (充電専用) / USB Type-C (充電専用) | |
対応カメラ | PENTAX Q10 / Q7 | PENTAX Q-S1 | PENTAX Q |
【充電確認済みUSB充電器、モバイルバッテリー】
・Anker PowerPort 5
・Miwakura Power Bank MPB-10000
・Owltech OWL-LPBAC6701
・Philips Power Bank DLP8720C